病気やけがで長期間働けなくなった場合、収入が途絶えてしまうことは大きな不安につながります。そんな時に生活を支えてくれる制度が「健康保険の傷病手当金」です。会社員や公務員など健康保険に加入している人が利用でき、一定の条件を満たすと休業中の生活費の一部を補填してくれます。本記事では、傷病手当金の支給条件、支給額の計算方法、申請手続きの流れ、よくある疑問点について詳しく解説します。
傷病手当金とは、健康保険に加入している被保険者が病気やけがによって働けなくなったときに、所得の一部を補償する制度です。会社を休む間、給与が支給されない場合や減額された場合に生活を支える役割を果たします。
労災保険が「業務上のけがや病気」を対象としているのに対し、傷病手当金は「業務外のけがや病気」が対象となる点が大きな違いです。例えば、風邪やがん、交通事故など日常生活で発生する病気やけがが主な対象となります。
傷病手当金を受けるには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。
傷病手当金の金額は、次の計算式で求められます。
1日あたりの支給額 = 直近12か月の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3
例)標準報酬月額が30万円の場合
このように、通常の給与の約3分の2が補償される仕組みです。
傷病手当金が支給されるのは、最長で「支給開始日から1年6か月」です。
ただし、1年6か月間ずっと連続して休まなくても、同じ病気やけがであれば通算して計算されます。
傷病手当金を受け取るためには、以下の手続きが必要です。
傷病手当金は他の制度と併用できる場合があります。
退職後でも、在職中に傷病手当金を受けていた場合や条件を満たしていれば継続して受給可能です。ただし、健康保険に任意継続加入している必要はありません。
国民健康保険には傷病手当金の制度がありません。ただし、一部の自治体では独自に支給する場合があります。
はい。必ず医師が「労務不能」と診断した証明が必要です。自己申告だけでは認められません。
傷病手当金は、急な病気やけがで働けなくなった時の大切なセーフティネットです。しかし、制度を知らなかったり、手続きが遅れたりすると、本来もらえるはずの給付を逃してしまう可能性があります。
これらを心がけることで、スムーズに手続きを進められます。
健康保険の傷病手当金は、病気やけがで働けなくなった時に生活を支える大切な制度です。
いざという時に困らないよう、制度を正しく理解し、必要に応じて活用できるようにしておきましょう。