企業や個人事業主が保有する車両には「自動車税」が課されます。毎年5月ごろに納付書が届き、会計処理が必要となりますが、仕訳方法に迷う方も多いのではないでしょうか?本記事では、自動車税の基礎知識から、仕訳方法、実務でよくあるケース、間違えやすいポイントまで丁寧に解説します。経理初心者の方でも理解できるように、具体的な仕訳例を交えて紹介します。
自動車税は、4月1日時点で自動車を保有している人・法人に対して課される地方税です。車の種類や排気量によって税額が決まり、普通車であれば都道府県、軽自動車であれば市区町村に納めます。法人で複数台の車を保有している場合、それぞれに課税されます。
通常は5月上旬に納付書が届き、5月末までに納付するのが一般的です。
自動車税の納付は「毎年1回」ですが、会計処理をいつ行うかは「発生主義」か「現金主義」かで異なります。一般的には発生主義(発生したときに記帳する)を採用しているため、「納付時」に仕訳を起こすケースが多くなります。
ただし、納付書が届いた時点では未払いですので、未払費用として処理しておく方法もあります。
もっとも基本的な仕訳は以下の通りです。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
租税公課 | 34,500円 | 普通預金 | 34,500円 |
※車の排気量によって金額は変動します。
納付書が届いた時点で未払い処理する場合は以下のようになります。
納付書到着時:
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
租税公課 | 34,500円 | 未払金 | 34,500円 |
支払時:
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
未払金 | 34,500円 | 普通預金 | 34,500円 |
自動車税は「事業に必要な経費」として扱うことができるため、「租税公課」で処理します。ただし、プライベート使用と混在する場合(たとえば社長の車など)は、按分処理を行う必要があります。
例えば、自動車税の全額を経費計上しても、税務調査時に「私的利用分が多い」と判断されれば否認される恐れがあります。
主に使われる勘定科目は次のとおりです。
「租税公課」は経費処理されるため、法人税の課税所得を減らす効果があります。
軽自動車税は普通車の自動車税と異なり、課税主体が市区町村になります。ただし、仕訳処理の考え方は同じで、「租税公課」で処理します。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
租税公課 | 10,800円 | 普通預金 | 10,800円 |
市区町村から届く納付書に基づき、同様の処理をすれば問題ありません。
電子納付や口座振替によって支払った場合でも、仕訳は基本的に同じです。使用する貸方科目が「普通預金」や「当座預金」など、実際に引き落とされた口座名になります。
また、電子納付時の手数料が発生した場合は「支払手数料」で仕訳を追加します。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
租税公課 | 34,500円 | 普通預金 | 34,500円 |
支払手数料 | 100円 | 普通預金 | 100円 |
自動車税とは別に、自動車取得時には「自動車取得税」「重量税」などがかかることがあります。これらは仕訳科目が異なる場合もあるため、購入費用として「車両運搬具」などに含めるケースもあります。
取得時の税金を混同して「租税公課」にしてしまうと、減価償却計算にズレが生じるため注意が必要です。
Q1:5月末に納付したが、期首は4月。どう処理する?
→年度内での発生なので、5月に「租税公課」として計上でOKです。
Q2:個人事業主のプライベート使用車両の自動車税は?
→事業で使っている割合分のみ按分して「租税公課」として計上します。残りは家事費扱い。
Q3:未払い処理を忘れてしまった場合は?
→納付時にそのまま「租税公課」で処理しても実務上は問題になりにくいですが、正確な期間損益管理を求められる場合は調整が必要です。
自動車税は毎年発生する経費であり、正しく仕訳することが求められます。基本は「租税公課」で処理すれば問題ありませんが、支払方法や未払い処理、私的利用の按分など、ケースに応じた判断が必要です。
この記事を参考に、自社や自分のケースに合った処理を心がけ、帳簿を正確に保ちましょう。