ビジネスの現場では、現金取引以外にも「手形」を使った決済が行われています。特に中小企業においては、取引先との信用取引の一環として受取手形や支払手形が活用される場面も少なくありません。
しかし、手形取引には一定のメリットがある一方で、「裏書」や「割引」、「不渡り」など、リスク管理が必要な場面も多く存在します。この記事では、手形の基本から、具体的な取引の流れ、注意点までをわかりやすく解説します。経理や経営管理に関わる方はもちろん、これから学びたい初心者の方にも役立つ内容です。
手形とは、将来の一定期日に金銭の支払いを約束する有価証券です。大きく分けて以下の2種類があります。
手形取引は、現金を使わずに信用をベースに行う決済手段です。そのため、資金繰りの調整や取引先との関係構築に有効な手段となります。
手形取引は以下のような流れで行われます。
このように、受け取りから決済までには時間差があり、その間に裏書や割引といった処理が行われる場合もあります。
手形の「裏書」とは、手形の権利を第三者に譲渡する行為です。たとえば、A社がB社から受け取った手形を、C社への支払いに使う場合、裏書をして手形をC社に渡します。これにより、C社は手形の支払請求権を得ることになります。
裏書は以下の点に注意が必要です。
「割引」は、受け取った手形の満期を待たずに、銀行などの金融機関で現金化する方法です。
たとえば、満期が3ヶ月先の手形を現金化したい場合、銀行に手形を持ち込むと「割引料」を差し引いた金額が受け取れます。
割引のメリット:
割引のデメリット:
「不渡り」とは、手形の支払期日になっても、支払人(振出人)が資金不足などにより支払いができない状態です。不渡りになると、以下のような大きな影響があります。
このように、不渡りは取引先の経営破綻や資金繰りの悪化を示すサインであり、自社にも連鎖的な影響を及ぼすため、非常に注意が必要です。
手形取引には信用リスクがつきものですが、以下のような対策を講じることで、リスクを軽減することが可能です。
最近では、紙の手形に代わって「電子記録債権(でんさい)」が注目されています。これは、インターネット上で手形と同じ機能を果たすもので、以下のような利点があります。
これにより、より安全かつ効率的な資金取引が可能になります。中小企業でも導入が進んでおり、今後は手形からの移行も進むと考えられます。
手形は企業間の信用を基にした取引手段であり、資金繰りの調整や取引のスムーズな実行に役立つ一方で、不渡りや裏書リスクといった注意点も多く存在します。
裏書による移転や割引による資金化などの活用方法を理解しつつ、相手先の信用調査や不渡り対策を行うことで、より安全な手形取引が可能となります。
これからの時代、電子記録債権などの新たな手段も積極的に取り入れながら、健全な企業運営を目指していきましょう。