簿記を学んでいると「試算表(しさんひょう)」という言葉をよく耳にします。試算表は、帳簿の集計や仕訳の正確さを確認するための一覧表で、日々の記帳がきちんと行われているかをチェックする重要な役割を担っています。しかし、初心者にとっては、種類や作成手順が分かりづらいという声も少なくありません。
この記事では、簿記における試算表の基礎知識から、実際の作成手順、注意点までを丁寧に解説します。これから簿記を学ぶ方、試算表の理解を深めたい方に向けて、わかりやすい言葉でご紹介していきます。
試算表とは、仕訳帳や総勘定元帳をもとに、各勘定科目の残高や合計を一覧にまとめた表のことです。主に月末や決算前に作成され、帳簿の記録が正しいかどうかを確認するために使われます。
例えば、借方と貸方の合計金額が一致していれば、記帳ミスがないと判断できます。逆に一致していなければ、どこかに記帳ミスがあるということになります。
試算表には以下のような役割があります:
試算表には目的や作成タイミングに応じて、以下の3つの種類があります。
各勘定科目ごとに、借方合計と貸方合計を集計したものです。
「合計が一致するか」に重きを置いており、残高は表示されません。
各勘定科目の「残高(差額)」のみを表示した試算表です。現在の資産・負債・収益・費用の状況を一目で把握できます。
合計試算表と残高試算表を合わせた形式で、借方合計・貸方合計と、借方残高・貸方残高の両方を掲載します。
企業会計や簿記の学習では、最もよく使われる形式です。
試算表を作るためには、まず正確な帳簿記入が前提です。以下の手順で進めます。
仕訳帳にはすべての取引が時系列で記録されており、これが元になります。間違いがないかチェックしましょう。
仕訳帳から各勘定科目ごとに記録をまとめた「総勘定元帳」に転記します。これにより、勘定ごとの合計金額を確認できます。
勘定ごとの「借方合計」「貸方合計」または「残高(借方−貸方)」を計算します。
各勘定科目の数値を試算表に転記します。合計が左右で一致するか確認し、不一致があれば原因を調査します。
試算表を正しく作成するためには、いくつかのポイントに注意が必要です。
特に合計残高試算表では、4つの合計すべてがそれぞれ一致していることが重要です。どこかがズレていると、帳簿上の問題や記帳ミスの可能性が高まります。
以下は簡易的な合計残高試算表の例です。
勘定科目 | 借方合計 | 貸方合計 | 借方残高 | 貸方残高 |
---|---|---|---|---|
現金 | 300,000 | 100,000 | 200,000 | |
売掛金 | 150,000 | 50,000 | 100,000 | |
買掛金 | 30,000 | 90,000 | 60,000 | |
資本金 | 300,000 | 300,000 | ||
売上 | 500,000 | 500,000 | ||
仕入 | 200,000 | 200,000 | ||
給料 | 100,000 | 100,000 | ||
合計 | 780,000 | 780,000 | 600,000 | 860,000 |
このように、借方・貸方の合計が一致していれば、帳簿の記録が一応正しいことがわかります。ただし、内容の妥当性までは保証されません。
試算表は決算書の土台になります。特に残高試算表は、以下のように活用されます。
このように、試算表を正確に作成することは、決算書の精度を高め、経営判断に役立てる第一歩となります。
試算表は企業の会計実務だけでなく、以下のような場面でも使われます:
試算表は、帳簿の正確性をチェックし、決算の準備を整えるうえで欠かせない存在です。種類や作成手順を理解することで、日々の記帳作業にも自信が持てるようになります。
とくに簿記検定の勉強中の方にとっては、試算表の作成が理解できるようになると、試験問題の得点源にもなります。日々の練習の中でぜひ試算表の作成に慣れておきましょう。