建物・車両・備品の会計処理をわかりやすく解説|固定資産の購入・管理・減価償却の基本

会社や個人事業で設備投資を行う際、建物・車両・備品などの「固定資産」は避けて通れない存在です。これらの資産は、購入時にすぐに費用化されるのではなく、減価償却によって複数年に分けて費用計上されます。
本記事では、固定資産の購入から仕訳処理、減価償却、そして売却や除却時の対応まで、簿記初心者でもわかるようにやさしく解説します。税務と会計の違いにもふれながら、実務に役立つ知識を整理しましょう。


固定資産とは?定義と種類の基本

固定資産とは、長期間にわたって事業に使用される資産のことです。具体的には、以下のようなものが該当します。

  • 建物・建物附属設備(事務所、倉庫、照明設備など)
  • 車両運搬具(営業車、配送トラックなど)
  • 工具・器具・備品(パソコン、机、椅子など)

税務上は「取得価額が10万円以上かつ1年以上使用する見込みのある資産」を固定資産として扱います(※少額資産の特例あり)。


購入時の仕訳処理

固定資産を購入した場合、費用ではなく資産として仕訳します。以下は主な例です。

建物を購入した場合

(借方)建物    10,000,000円      現金    10,000,000円(貸方)

※建物と土地を一緒に購入した場合は、それぞれの金額を按分して仕訳する必要があります。土地は減価償却しません。

車両を購入した場合

(借方)車両運搬具 3,000,000円      現金    3,000,000円(貸方)

※自動車取得税や登録手数料などの付随費用も取得原価に含めます。

備品を購入した場合

(借方)備品    150,000円      現金    150,000円(貸方)

10万円未満であれば、「消耗品費」で処理しても構いません。


減価償却とは?費用配分の考え方

減価償却とは、固定資産の取得費用を耐用年数にわたって分割し、毎期の費用として計上していく会計処理です。

減価償却を行うことで、以下のようなメリットがあります。

  • 利益の過大計上を防ぐ
  • 税務上の課税所得を適正にする
  • 長期投資の回収を計画的に行う

減価償却の計算方法

日本の会計基準や税法では、主に以下の方法が用いられます。

定額法(よく使われる)

毎年、同じ金額を償却します。

計算式:
(取得価額 − 残存価額)÷ 耐用年数

例)取得価額100万円、耐用年数5年、残存価額0円の場合:

100万円 ÷ 5年 = 毎年20万円償却

定率法(初年度に多く償却)

初年度に多く償却し、年々少なくなっていく方法です。中小企業の税務上はこちらが多く採用されます。

計算式:
未償却残高 × 償却率

税務申告の際には、「定率法から定額法への変更届出書」が必要な場合があります。


減価償却の仕訳例

定額法の場合(耐用年数5年、取得価額100万円)

(借方)減価償却費 200,000円      (貸方)減価償却累計額 200,000円

「減価償却累計額」は固定資産の帳簿価額を減少させる「評価勘定」です。


減価償却資産の耐用年数(一例)

資産名耐用年数
建物(事務所用)50年
車両(営業用)4〜6年
備品(パソコン)4年
備品(机・椅子)8年

※法定耐用年数は国税庁の「耐用年数表」に基づいて判断します。


固定資産を売却・除却する場合の処理

売却時

帳簿価額よりも高く売れた場合は「固定資産売却益」、低い場合は「売却損」として処理します。

例:帳簿価額50万円の車両を60万円で売却

(借方)現金      600,000円      (貸方)車両運搬具 1,000,000円  
    減価償却累計額 500,000円      固定資産売却益 100,000円


除却(廃棄)時

除却損として一括で損金処理します。

(借方)減価償却累計額 600,000円      (貸方)車両運搬具 1,000,000円
    除却損     400,000円


少額減価償却資産の特例とは?

中小企業には、一定要件を満たせば30万円未満の資産を一括で経費計上できる「少額減価償却資産の特例」があります。

要件:

  • 青色申告をしている中小企業者等
  • 1資産あたりの取得価額が30万円未満
  • 年間合計300万円まで

この特例は、資産台帳に登録しながらも、帳簿上は即時償却となり、税務上の管理が簡易になります。


固定資産台帳の作成と管理のすすめ

固定資産の適切な管理のためには、「固定資産台帳」の作成が推奨されます。

記載内容:

  • 資産名・管理番号
  • 取得日・取得価額
  • 耐用年数・償却方法
  • 減価償却の進捗
  • 売却・除却日 など

台帳管理を行うことで、会計監査や税務調査時の対応もスムーズになります。


まとめ:固定資産の会計処理は正確さと継続性がカギ

固定資産の会計処理は一度覚えてしまえば難しくありませんが、購入時の仕訳、減価償却の適用、そして売却・除却までを一貫して適正に処理することが重要です。
また、税務上の特例制度をうまく活用すれば、キャッシュフローを有利に保つことも可能です。経理や個人事業主の方は、固定資産台帳とともに、日々の管理をしっかり行いましょう。

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