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決算時には、正確な損益を計上するために「決算整理仕訳」が必要になります。中でも重要なのが、前払費用・未払費用といった「経過勘定項目」の処理です。これらは、費用や収益が実際に発生したタイミングと会計期間が一致しない場合に、正しく会計処理するために用います。見越し・繰延といった処理を理解しないままでは、利益や費用の計上が適切でなくなってしまい、決算書の信頼性に影響を与える可能性も。本記事では、経過勘定の基礎から、具体的な仕訳例まで、初心者にもわかりやすく解説していきます。
経過勘定とは、会計期間をまたぐ取引に対して、発生主義の原則に基づき適切に収益や費用を計上するために用いる勘定科目です。発生主義とは、収益や費用を「発生したときに計上する」考え方です。
たとえば、前払いした家賃の一部が翌期分に該当する場合や、電気代が翌期に請求されるが当期の使用分に該当する場合などがこれにあたります。
このようなケースでは、「見越し」と「繰延」という概念を使って、収益や費用を正しい期間に割り当てる必要があります。
当期に発生しているが、まだ取引が完了していない(請求・支払が行われていない)収益や費用を「見越し」として計上します。
すでに収支があっても、実際には来期に属する収益や費用を「繰延」として、当期の収益・費用から除きます。
この「見越し・繰延」処理によって、期間対応の原則に沿った会計処理が可能になります。
たとえば、3月決算で、3月分の電気代が4月に請求されるとします(1万円)。この費用は今期に発生しているので、決算時に次のように仕訳を行います。
仕訳例:
(借)水道光熱費 10,000/(貸)未払費用 10,000
翌期に支払時:
(借)未払費用 10,000/(貸)現金または預金 10,000
この処理により、費用が発生した期に正しく反映されます。
たとえば、3月末時点で、3か月分の利息収入が発生しているが、実際の入金は4月である場合(利息収益3,000円)。
仕訳例:
(借)未収収益 3,000/(貸)受取利息 3,000
翌期の入金時:
(借)現金預金 3,000/(貸)未収収益 3,000
「未収収益」は資産として計上し、収益を正しい期間に認識させます。
たとえば、保険料12,000円を1年分まとめて1月に支払ったとします(決算は3月)。
このうち、4月以降9か月分は翌期の費用になるため、次のように振り替えます(繰延処理)。
仕訳例(3月末):
(借)前払費用 9,000/(貸)保険料 9,000
翌期、毎月費用計上:
(借)保険料 1,000/(貸)前払費用 1,000
たとえば、顧客から4月分の家賃(10,000円)を3月に受け取った場合。
仕訳例(3月末):
(借)受取家賃 10,000/(貸)前受収益 10,000
翌期4月に家賃提供(収益計上):
(借)前受収益 10,000/(貸)受取家賃 10,000
このように、実際にサービスが提供された時点で収益に計上します。
勘定科目 | 内容 | 決算時の処理方向 |
---|---|---|
前払費用 | 翌期の費用を前払い | 費用から資産へ |
未払費用 | 今期の費用で未払 | 費用を追加計上 |
前受収益 | 翌期の収益を前受 | 収益から負債へ |
未収収益 | 今期の収益で未収 | 収益を追加計上 |
この表を参考に、どの勘定が資産・負債・収益・費用にあたるかを明確にしておくと便利です。
経過勘定項目は、企業の収益と費用を正確に反映するために不可欠な処理です。前払費用・未払費用・前受収益・未収収益といった勘定科目をしっかり理解し、見越し・繰延を適切に行うことは、会計の信頼性を保ち、税務リスクを軽減する上でも重要です。決算整理の際は、これらの処理を丁寧に見直して、正確な決算書を作成しましょう。