経理業務を行う上で欠かせない「伝票会計」。中でも「単一仕訳伝票」と「複合仕訳伝票」は、取引の記録方法として基本中の基本です。
ですが、簿記に慣れていない人にとっては「この取引は単一仕訳?複合仕訳?」と戸惑うことも多いのではないでしょうか。
本記事では、伝票会計における「単一仕訳伝票」と「複合仕訳伝票」の違いや、それぞれの使い方、実際の記入例までを丁寧に解説します。経理初心者の方や、伝票記入に自信がない方は、ぜひ参考にしてみてください。
伝票会計とは、取引を記録する際に「伝票」と呼ばれる紙やデータ形式の用紙に仕訳を記入し、これを基に帳簿を作成する会計方式です。
もともとは紙の伝票を用いた管理手法でしたが、現在では会計ソフトなどを使って電子的に伝票を処理するケースが増えています。
伝票会計の主な特徴は次の通りです。
一方、仕訳帳は、取引を時系列順にすべて記録する帳簿であり、伝票を使用せずに直接記帳する方式も存在します。
単一仕訳伝票とは、1つの取引が「借方1つ・貸方1つ」という構成で完結する仕訳伝票のことです。
これはもっとも基本的な形式であり、例えば以下のようなシンプルな取引が対象になります。
このように、借方と貸方にそれぞれ1つずつの勘定科目しか出てこない場合は、単一仕訳伝票を使用します。
特徴としては、以下のような点が挙げられます。
複合仕訳伝票とは、借方または貸方、あるいはその両方に2つ以上の勘定科目が出てくる複雑な仕訳伝票です。
たとえば、次のような取引が該当します。
このように、「借方2つ・貸方1つ」「借方1つ・貸方2つ」または「借方2つ・貸方2つ以上」となる場合に、複合仕訳伝票を用います。
複合仕訳伝票の特徴は次の通りです。
項目 | 単一仕訳伝票 | 複合仕訳伝票 |
---|---|---|
勘定科目数 | 借方・貸方 各1つ | 借方または貸方に2つ以上 |
使われる場面 | 小口現金、簡易取引 | 複雑な費用処理、まとめ払い |
記入のしやすさ | 簡単 | 難易度高め |
ミスのリスク | 低め | 高め |
会計処理の幅 | 限定的 | 柔軟に対応可 |
業務の性質によってどちらを使うかは異なりますが、企業規模が大きくなればなるほど、複合仕訳の重要性が増していきます。
日付 | 摘要 | 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|---|---|
5/1 | 文具購入 | 消耗品費 | 800 | 現金 | 800 |
伝票上には、取引日、内容(摘要)、勘定科目、金額を記載します。記入ミス防止のためにも、摘要欄には具体的な取引内容を記しましょう。
日付 | 摘要 | 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|---|---|
5/10 | 通信費と光熱費支払 | 通信費 | 4,000 | 普通預金 | 10,000 |
水道光熱費 | 6,000 |
このように、1枚の伝票で複数の費用を処理できるのが複合仕訳の利点です。
伝票の選び方には明確なルールはありませんが、一般的には以下のような基準で判断します。
また、企業や事業所によっては使用する伝票形式が決まっていることもあるため、社内ルールを確認することも重要です。
伝票記入でありがちなミスには、以下のようなものがあります。
これらを防ぐためには、以下の対策が効果的です。
単一仕訳伝票と複合仕訳伝票の違いを理解することで、伝票記入の効率が大きく変わります。
最初は難しく感じるかもしれませんが、実例を多く見ることで自然と判断力がついてきます。日々の取引を正確に記録することは、会社の財務管理を支える大切な業務です。
これを機に、ぜひ伝票会計の基本をマスターして、経理業務に自信をつけていきましょう。