クレーム報告書は「何が起き、誰に影響し、どう対応し、今後どう防ぐか」を社内で共有するための公式文書です。
感情で書かず、事実と再発防止を中心にまとめることで、同じミスを繰り返さない組織づくりにつながります。
本記事では、最短で質の高い報告書を仕上げるための基本構成、書き方のコツ、NG表現の言い換え、コピペで使えるテンプレート、そして具体的な例文まで一気に解説します。
新人担当者の方はもちろん、管理職や品質担当の方にも役立つ内容です。
クレーム報告書は、発生した不具合や接客トラブルなどに関する「事実」「影響」「初動」「原因」「再発防止」を記録し、関係者に共有するための文書です。
目的は責任追及ではなく、再発防止と信頼回復です。
社外対応の一貫として謝罪や補償を決める材料となり、社内では業務改善の起点になります。
記録が残ることで、後日同種の事案が起きた際の参照にもなります。
クレーム報告書は、以下の順に並べると読み手が理解しやすくなります。
まず、一次情報を集めます。
受付担当のメモ、注文データ、在庫記録、通話録音、メール履歴、監視ログ、現場写真などを確認します。
次に、関係者ヒアリングを短時間で実施し、認識のズレを埋めます。
最後に、社外共有が必要なレベルか、個人情報や機密の取り扱いに問題がないか、上長・品質管理の確認フローを通します。
件名:クレーム報告書(案件ID:____)
1. 概要
____(一文で要点)
2. 発生日時・場所
発生日:__年__月__日__時__分
場所/チャネル:____(店舗名/ECサイト/電話 等)
3. 関係者
お客様:____(氏名/企業名)※個人情報は社内基準に準拠
社内担当:____(部署・氏名)
4. 事実経過(時系列)
・____(時刻):____
・____(時刻):____
5. 影響
顧客影響:____(数量/金額/時間)
社内影響:____
法令・規約影響:____
6. 初期対応
____(実施内容/時刻/担当)
7. 原因分析
直接原因:____
真因(仕組み・プロセス):____
根拠:____(ログ/証跡)
8. 再発防止策
対策1:____(期限:__/責任者:__)
対策2:____(期限:__/責任者:__)
検証方法:____(KPI・監査方法)
9. 添付
写真:__枚/ログ:__件/メール:__件
作成:__年__月__日 部署:____ 氏名:____
承認:____
概要
新規出荷分A123の一部で動作不良が発生し、顧客B社で使用開始不可となった。
発生日時・場所
2025年7月26日 10:20、B社東京工場にて。
関係者
B社 生産技術部/当社カスタマーサポート(CS課 佐藤)。
事実経過
10:20 B社より「起動しない」と電話。
10:45 当社で同ロット抽出検査、3/50台で同症状再現。
11:30 代替機6台の当日出荷を決定。
影響
B社の検証作業が6時間遅延。代替機輸送費12,400円を当社負担。
初期対応
即時謝罪、代替機出荷、ロット隔離。
原因分析
直接原因:電源基板コネクタ圧入不足。
真因:外注先の工程内抜取り検査項目に圧入高さ確認が未設定。
再発防止策
外注先に検査工程を追加(7/30実装、責任者:購買部田中)。
当社受入検査に外観チェックを追加(8/1開始、責任者:品質課鈴木)。
KPI:当該ロット以降の不良率0.3%以下を3か月継続。
添付
不良写真3枚、検査記録2件、通話録音1件。
概要
社内手配ミスによりC社向け部材の出荷が1営業日遅延した。
発生日時・場所
2025年7月22日、本社物流センター。
関係者
C社調達部、当社物流部・営業一課。
事実経過
9:00 ピッキング完了報告が誤って前日分に紐付け。
14:00 出荷検品時に相違を検知したが承認者不在で停止。
翌7/23 10:00 出荷。
影響
C社の生産前検査が半日延期。違約金対象外だが信頼低下懸念。
初期対応
代替輸送で午前着を確保、C社へ謝罪と進捗報告。
原因分析
直接原因:WMS画面で出荷日付の選択誤り。
真因:繁忙期の承認代行ルール未整備、二重チェック機能未設定。
再発防止策
承認代行者を営業日常時2名設定(7/29)。
WMSに日付選択時の警告ポップアップを追加(8/10リリース、情シス)。
週次で遅延ゼロをレビュー。
概要
店舗スタッフの対応言動が不適切との申し出。
発生日時・場所
2025年7月20日 15:30、〇〇店。
関係者
来店客D様、店舗スタッフ2名。
事実経過
レジ待ち列が伸びた際、スタッフが「急いでない方は後ろへ」と大声で案内。
D様は「急いでいないと決めつけられた」と不快感を表明。
影響
D様が当日購入を取りやめ。SNS投稿を確認(拡散は限定的)。
初期対応
店長が当日中に謝罪し、クーポンを提供。
原因分析
直接原因:案内文言が不適切。
真因:混雑時の標準トークスクリプト未整備、応援要請基準不透明。
再発防止策
混雑時アナウンスの定型化(例:「お急ぎの方がいらっしゃればお声がけください」)。
レジ応援の発動基準を「待ち人数5名超」で統一。
研修でロールプレイを実施(8月前半)。
概要
一次クレーム受付後の折返しが規定(15分)を超過し、二次クレームに発展。
発生日時・場所
2025年7月18日、コールセンター。
関係者
E社ご担当者、CS課夜間シフト。
事実経過
19:05 受付。
19:40 折返し、規定超過。
19:50 強い不満表明。
影響
満足度低下。月次評価へのマイナス反映懸念。
初期対応
責任者が直接謝罪し、夜間直通窓口を案内。
原因分析
直接原因:担当者の同時案件増。
真因:夜間帯の人員計画が実績に合っていない。
再発防止策
夜間帯の最小要員を2名→3名に増員。
折返しSLAをモニタリングするダッシュボード設置(7/31)。
概要
表示ラベルの誤記(賞味期限)が一部に混在。市場流出前に自主回収。
発生日時・場所
2025年7月15日、本社パッケージライン。
関係者
品質管理部、生産部、出荷検査。
事実経過
ロットL-778で印字設定が旧仕様のまま。
出荷検査で1/120箱を検知し、全量停止。
影響
再印字作業により出荷が4時間遅延。法令違反は未発生。
初期対応
全量印字やり直し、作業者入替、二重確認を実施。
原因分析
直接原因:設定切替チェック漏れ。
真因:仕様変更時のラインチェックリスト未更新。
再発防止策
チェックリスト改訂、電子サイン必須化(7/28)。
変更時教育の受講完了をWFMで可視化。
月次監査を追加。
報告書には、写真・スクリーンショット・通話録音・ログなどの証跡を必ず紐づけます。
個人情報は社内基準に従い、マスキングやアクセス権制御を徹底します。
証跡のファイル名は「日付_案件ID_内容」で統一すると検索性が上がります。
再発防止策には、期限・責任者・検証方法を必ずセットで書きます。
例:「検品工程に重量計チェック追加(期限:8/5、責任者:品質課長、検証:翌ロットで抜取50件の一致率100%)」
こうすることで、やりっぱなしを防ぎ、会議でのフォローも容易になります。
良いクレーム報告書は、事実→影響→初動→原因→再発防止が一本の線でつながっています。
結論先行で簡潔に、数値と証跡で裏付け、真因に手当てをする。
この記事のテンプレートと例文をベースに、あなたの現場に合わせて項目を微調整してください。
継続的に書式と運用を磨くことが、顧客満足と品質向上の近道です。