クレーム報告書の書き方完全ガイド【テンプレート&例文付き】

クレーム報告書は「何が起き、誰に影響し、どう対応し、今後どう防ぐか」を社内で共有するための公式文書です。
感情で書かず、事実と再発防止を中心にまとめることで、同じミスを繰り返さない組織づくりにつながります。
本記事では、最短で質の高い報告書を仕上げるための基本構成、書き方のコツ、NG表現の言い換え、コピペで使えるテンプレート、そして具体的な例文まで一気に解説します。
新人担当者の方はもちろん、管理職や品質担当の方にも役立つ内容です。


クレーム報告書とは(目的と役割)

クレーム報告書は、発生した不具合や接客トラブルなどに関する「事実」「影響」「初動」「原因」「再発防止」を記録し、関係者に共有するための文書です。
目的は責任追及ではなく、再発防止と信頼回復です。
社外対応の一貫として謝罪や補償を決める材料となり、社内では業務改善の起点になります。
記録が残ることで、後日同種の事案が起きた際の参照にもなります。

基本構成:5W1Hで迷わない骨子

クレーム報告書は、以下の順に並べると読み手が理解しやすくなります。

  1. 概要(What):起きた事象を一文で。
  2. 発生日時・場所(When/Where):特定できる時刻・店舗・チャネル。
  3. 関係者(Who):お客様・担当者・部署。
  4. 事実経過(What/How):時系列で簡潔に。
  5. 影響・被害:顧客影響、社内影響、法令・規約影響。
  6. 初期対応(So far):その場で実施したこと。
  7. 原因分析(Why):直接原因と真因を分ける。
  8. 再発防止策(Next):人・モノ・仕組みの改善を具体化。
  9. 期限・責任者:実行日、担当、検証方法。
  10. 添付:証跡(写真、ログ、通話記録、メール等)。

書く前の準備:情報収集と確認フロー

まず、一次情報を集めます。
受付担当のメモ、注文データ、在庫記録、通話録音、メール履歴、監視ログ、現場写真などを確認します。
次に、関係者ヒアリングを短時間で実施し、認識のズレを埋めます。
最後に、社外共有が必要なレベルか、個人情報や機密の取り扱いに問題がないか、上長・品質管理の確認フローを通します。

伝わる文章のコツ:結論先行+事実記述

  • 結論先行:「〇〇の不具合により、お客様Aに出荷遅延が発生」と最初に要点を書く。
  • 事実と推測を分ける:「事実:/推測:」とラベル付け。
  • 数値で具体化:「約」ではなく「2時間14分」「不良率2.3%」など。
  • 主観・感情語を避ける:「ひどい」「大変申し訳」など感情は社外文面で。報告書は事実中心。
  • 再現性:第三者が読んでも同じ状況を再現できるレベルで記述。

NG表現とOK言い換え(すぐ使える例)

  • 「多分〜だと思います」→「推測:〜の可能性。根拠:ログNo.123」
  • 「バタバタして対応が遅れた」→「担当不在により一次返信まで45分の遅延(規定は15分)」
  • 「相手が怒っていた」→「お客様は声量が上がり『本日中の出荷を希望』と強い要望を表明」
  • 「原因不明」→「現時点で直接原因は未特定。8月5日までに追加調査し報告」

クレーム報告書テンプレート

件名:クレーム報告書(案件ID:____)

1. 概要
____(一文で要点)

2. 発生日時・場所
発生日:__年__月__日__時__分
場所/チャネル:____(店舗名/ECサイト/電話 等)

3. 関係者
お客様:____(氏名/企業名)※個人情報は社内基準に準拠
社内担当:____(部署・氏名)

4. 事実経過(時系列)
・____(時刻):____
・____(時刻):____

5. 影響
顧客影響:____(数量/金額/時間)
社内影響:____
法令・規約影響:____

6. 初期対応
____(実施内容/時刻/担当)

7. 原因分析
直接原因:____
真因(仕組み・プロセス):____
根拠:____(ログ/証跡)

8. 再発防止策
対策1:____(期限:__/責任者:__)
対策2:____(期限:__/責任者:__)
検証方法:____(KPI・監査方法)

9. 添付
写真:__枚/ログ:__件/メール:__件

作成:__年__月__日 部署:____ 氏名:____
承認:____

例文1:商品不良(初期不良・交換対応)

概要
新規出荷分A123の一部で動作不良が発生し、顧客B社で使用開始不可となった。

発生日時・場所
2025年7月26日 10:20、B社東京工場にて。

関係者
B社 生産技術部/当社カスタマーサポート(CS課 佐藤)。

事実経過
10:20 B社より「起動しない」と電話。
10:45 当社で同ロット抽出検査、3/50台で同症状再現。
11:30 代替機6台の当日出荷を決定。

影響
B社の検証作業が6時間遅延。代替機輸送費12,400円を当社負担。

初期対応
即時謝罪、代替機出荷、ロット隔離。

原因分析
直接原因:電源基板コネクタ圧入不足。
真因:外注先の工程内抜取り検査項目に圧入高さ確認が未設定。

再発防止策
外注先に検査工程を追加(7/30実装、責任者:購買部田中)。
当社受入検査に外観チェックを追加(8/1開始、責任者:品質課鈴木)。
KPI:当該ロット以降の不良率0.3%以下を3か月継続。

添付
不良写真3枚、検査記録2件、通話録音1件。

例文2:納期遅延(社内起因)

概要
社内手配ミスによりC社向け部材の出荷が1営業日遅延した。

発生日時・場所
2025年7月22日、本社物流センター。

関係者
C社調達部、当社物流部・営業一課。

事実経過
9:00 ピッキング完了報告が誤って前日分に紐付け。
14:00 出荷検品時に相違を検知したが承認者不在で停止。
翌7/23 10:00 出荷。

影響
C社の生産前検査が半日延期。違約金対象外だが信頼低下懸念。

初期対応
代替輸送で午前着を確保、C社へ謝罪と進捗報告。

原因分析
直接原因:WMS画面で出荷日付の選択誤り。
真因:繁忙期の承認代行ルール未整備、二重チェック機能未設定。

再発防止策
承認代行者を営業日常時2名設定(7/29)。
WMSに日付選択時の警告ポップアップを追加(8/10リリース、情シス)。
週次で遅延ゼロをレビュー。

例文3:接客態度(対人クレーム)

概要
店舗スタッフの対応言動が不適切との申し出。

発生日時・場所
2025年7月20日 15:30、〇〇店。

関係者
来店客D様、店舗スタッフ2名。

事実経過
レジ待ち列が伸びた際、スタッフが「急いでない方は後ろへ」と大声で案内。
D様は「急いでいないと決めつけられた」と不快感を表明。

影響
D様が当日購入を取りやめ。SNS投稿を確認(拡散は限定的)。

初期対応
店長が当日中に謝罪し、クーポンを提供。

原因分析
直接原因:案内文言が不適切。
真因:混雑時の標準トークスクリプト未整備、応援要請基準不透明。

再発防止策
混雑時アナウンスの定型化(例:「お急ぎの方がいらっしゃればお声がけください」)。
レジ応援の発動基準を「待ち人数5名超」で統一。
研修でロールプレイを実施(8月前半)。

例文4:二次クレーム(初動連絡の遅れ)

概要
一次クレーム受付後の折返しが規定(15分)を超過し、二次クレームに発展。

発生日時・場所
2025年7月18日、コールセンター。

関係者
E社ご担当者、CS課夜間シフト。

事実経過
19:05 受付。
19:40 折返し、規定超過。
19:50 強い不満表明。

影響
満足度低下。月次評価へのマイナス反映懸念。

初期対応
責任者が直接謝罪し、夜間直通窓口を案内。

原因分析
直接原因:担当者の同時案件増。
真因:夜間帯の人員計画が実績に合っていない。

再発防止策
夜間帯の最小要員を2名→3名に増員。
折返しSLAをモニタリングするダッシュボード設置(7/31)。

例文5:社内向け(品質・法令観点の再発防止)

概要
表示ラベルの誤記(賞味期限)が一部に混在。市場流出前に自主回収。

発生日時・場所
2025年7月15日、本社パッケージライン。

関係者
品質管理部、生産部、出荷検査。

事実経過
ロットL-778で印字設定が旧仕様のまま。
出荷検査で1/120箱を検知し、全量停止。

影響
再印字作業により出荷が4時間遅延。法令違反は未発生。

初期対応
全量印字やり直し、作業者入替、二重確認を実施。

原因分析
直接原因:設定切替チェック漏れ。
真因:仕様変更時のラインチェックリスト未更新。

再発防止策
チェックリスト改訂、電子サイン必須化(7/28)。
変更時教育の受講完了をWFMで可視化。
月次監査を追加。

添付・証跡の扱い(個人情報と事実の裏付け)

報告書には、写真・スクリーンショット・通話録音・ログなどの証跡を必ず紐づけます。
個人情報は社内基準に従い、マスキングアクセス権制御を徹底します。
証跡のファイル名は「日付_案件ID_内容」で統一すると検索性が上がります。

原因分析を一段深く:直接原因と真因を分ける

  • 直接原因:目に見えるエラー(例:設定ミス)。
  • 真因:それを生んだ仕組みの穴(例:チェック工程の欠落、教育不足、設計上の制約)。
    真因に手を打たないと、担当者が変わっても再発します。
    「なぜを5回」や、ヒト・モノ・カネ・情報・手順の観点で洗い出すと漏れが減ります。

期限と責任者の明記:実行可能性を担保する

再発防止策には、期限・責任者・検証方法を必ずセットで書きます。
例:「検品工程に重量計チェック追加(期限:8/5、責任者:品質課長、検証:翌ロットで抜取50件の一致率100%)」
こうすることで、やりっぱなしを防ぎ、会議でのフォローも容易になります。

すぐ使えるチェックリスト(提出前の最終確認)

  • 結論が冒頭に書かれているか。
  • 事実と推測が区別されているか。
  • 数値・時刻・件数が明記されているか。
  • 影響が顧客・社内双方の観点で示されているか。
  • 初期対応・原因・再発防止が具体か。
  • 期限・責任者・検証方法がセットか。
  • 証跡が添付され、個人情報の取扱いが適切か。
  • 感情表現・主観語が混じっていないか。
  • 誤字脱字・表記ゆれがないか(例:7/28 と 2025年7月28日)。

まとめ:事実→原因→対策を一本の線に

良いクレーム報告書は、事実→影響→初動→原因→再発防止が一本の線でつながっています。
結論先行で簡潔に、数値と証跡で裏付け、真因に手当てをする。
この記事のテンプレートと例文をベースに、あなたの現場に合わせて項目を微調整してください。
継続的に書式と運用を磨くことが、顧客満足と品質向上の近道です。

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