簿記を学んでいると「精算表(せいさんひょう)」という言葉によく出会います。精算表は、決算を行う際にとても重要な役割を果たす資料です。しかし、初めて簿記に触れる方にとっては、「どこから手をつけたらいいのか分からない」「何のために作るの?」と疑問に思うことも多いでしょう。
この記事では、簿記における精算表の意味から目的、構成、作成方法までを、わかりやすく解説します。これから簿記を学ぶ方、検定試験を目指している方、実務で経理業務を担当する方にも役立つ内容です。
精算表とは、決算整理仕訳を行い、財務諸表を作成するための準備段階として使う帳票です。帳簿の内容を集計し、決算整理前と後の数値を整理して、貸借対照表と損益計算書を完成させるための基礎資料となります。
具体的には、試算表の残高をもとに、決算整理仕訳を加えて、損益計算書と貸借対照表の数値を導き出すために、1枚の用紙で一覧として管理する形式になっています。
精算表には次のような目的があります。
精算表は横に長い表形式で、以下のような構成になっています。
項目 | 説明 |
---|---|
科目欄 | 勘定科目名を記入します。 |
試算表欄 | 決算整理前の残高(借方・貸方)を記入します。 |
決算整理仕訳欄 | 決算整理後の仕訳(借方・貸方)を記入します。 |
修正記入欄 | 試算表に決算整理仕訳を加えた金額を記入します。 |
損益計算書欄 | 収益と費用に該当する金額を記入します。 |
貸借対照表欄 | 資産・負債・資本に該当する金額を記入します。 |
このように、精算表は一つの表にすべての要素をまとめて記入できるため、非常に実用的な形式になっています。
精算表を作成する手順は以下の通りです。
まず、決算整理前の試算表の数値を、試算表欄に記入します。これは日常的な帳簿記入によって集計された残高です。
決算日に必要な整理仕訳を行います。たとえば、減価償却費の計上、貸倒引当金の設定、売上原価の計算などです。
決算整理仕訳で使われた勘定科目について、整理仕訳欄に金額を記入します。
試算表の残高と決算整理仕訳の金額を加減して、修正記入欄に記入します。
収益・費用科目は損益計算書欄へ、資産・負債・純資産科目は貸借対照表欄へ転記します。
以下は簡易的な精算表の一部イメージです。
科目 | 試算表 借方 | 試算表 貸方 | 整理 借方 | 整理 貸方 | 修正 借方 | 修正 貸方 | 損益 借方 | 損益 貸方 | 貸借 借方 | 貸借 貸方 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
現金 | 100,000 | ー | ー | ー | 100,000 | ー | ー | ー | 100,000 | ー |
売上 | ー | 500,000 | ー | ー | ー | 500,000 | ー | 500,000 | ー | ー |
仕入 | 300,000 | ー | ー | ー | 300,000 | ー | 300,000 | ー | ー | ー |
このように、整理仕訳によって修正された金額を、損益や貸借の欄に振り分けていきます。
精算表は便利な帳票ですが、いくつかの注意点があります。
日本商工会議所主催の簿記検定(特に3級・2級)では、精算表を完成させる問題が頻繁に出題されます。手順さえマスターすれば、得点源になる部分ですので、繰り返し演習することが大切です。
精算表は、決算整理仕訳を通じて財務諸表を正確に作成するための「設計図」ともいえる存在です。初めは難しく感じるかもしれませんが、構成と流れを理解すれば、決して複雑ではありません。簿記の学習者にとっても、実務で経理を担当する方にとっても、必須の知識です。
まずはシンプルな例題から、何度も手を動かして精算表に慣れていきましょう。それが簿記をマスターする第一歩です。